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大山開山1300年祭と春日大社の古伯耆物

 

中国地方の最高峰大山だいせんの歴史・文化・自然を顕彰し、その魅力をアピールする伯耆国ほうきのくに「大山開山1300年祭」では、平成30年度、米子市美術館を会場に、大山の重宝や伯耆が生んだ名称安綱の日本刀などを紹介する特別共催展「大山山麓の至宝~「大山」ゆかりの刀を中心に~」を開催した。

この展覧会で大きな話題となったのが、戦前に春日大社(奈良県)の宝庫が解体修理された際に天井裏で発見され、平成29年の研磨によって「古伯耆物」と確認された長寸の太刀である。「古伯耆物」とは、安綱を祖として平安時代後期に興った伯耆国の刀工一派が作った作品の総称である。この太刀には作者の銘や年紀は無いが、刀身の古さから平安時代後期の作とみられ、安綱の可能性も指摘されている。

春日大社に奉納された時代や奉納者については今も謎のままであるが、春日大社には、中世に有力武将から奉納された太刀や甲冑が数多く残されており、篤い信仰心を示すためのものであろう。

他方、神仏が鎮まる霊山として信仰されてきた名峰大山の山麓では、鉄との深いかかわりを持つ中世の有力武将や、近世の大名たちが、鉄製の仏像や、古伯耆の刀剣などを奉納し、祈りをささげてきた。

このように武家社会においては、時や場所を超えて、「古伯耆物」は神宝として尊ばれていたことがうかがえる。

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